勝ちを追いすぎて、チームを見失ったことがある
かつて、勝ちにこだわりすぎて、
チームを作ることを後回しにしてしまった経験があります。
うまい選手を中心に回し、
戦術を整え、勝つためのメニューを徹底する。
でも、なぜかうまくいかない。
試合には勝っても、シーズンが進んでいくと、チームがバラバラになっていく――。
そのとき、「何かが足りない」と気づきました。
勝ちに行くなら、まず「チーム」から作らなければいけない。
そして、その土台になるのが、信頼される選手でした。
信頼される選手に共通する「たった1つの資質」
それは、「与える姿勢」です。
自分がどう評価されるかより、
チームにどう貢献できるかを考えて動ける選手。
言われなくても動き、誰かのために行動できる選手。
たとえば――
・練習の準備や片付けを黙ってこなす
・ベンチから声を出し続ける
・練習中に、ほかの選手に声をかける
・調子が悪い仲間を気づかう
・誰かの成功を、自分のことのように喜べる
こういう選手は、たとえ得点が多くなくても、
試合にあまり出られなくても、チームにとって欠かせない存在になります。
「信頼される選手」と「信頼されない選手」を、いくつかの行動で比較してみると、その違いが明確です。
信頼される選手 | 信頼されない選手 |
---|---|
話をよく聞く(コーチや選手同士の) | 話を聞いていない |
チームを優先する | 自分勝手な行動をする |
周囲と協力する | 自分本位のプレーをする |
練習でも懸命にプレーする | 試合の時だけ頑張る 練習は手を抜く or 態度が悪い |
技術があるかどうかではなく、こうした姿勢の差が、
「この子と一緒に戦いたい」と思わせるかどうかにつながっていきます。
チームを機能させるのは、目立つ人ではなく「支える人」
どこかで「アピールしなきゃ」「目立たなきゃ」と焦る空気を感じます。
チーム内の競争を勝ち抜き、登っていかなくてはと思っている。
・自分のうまさを見せたい
・リアクションで目立ちたい
・“俺がやった”を強調したい
でも、それだけではチームは機能しません。
うまく回っているチームには、必ず「与える選手」がいます。
コートの中でも外でも、チームのために動き、支えている選手です。
彼らの存在が、お互いが信頼しあい、支え合う文化を作っていきます。
それは、試合を重ねるたびに、チームの“厚み”になっていきます。
SNS時代の「自己アピール文化」と、信頼の本質
目立つ人があふれるようになったのは文化的な背景があります。
「自分にどんな得があるか」を考える時代に生きています。
SNSやメディアでは、「私を見てくれ」というメッセージがあふれていて、
“注目されること”が価値とされがちです。
でも、スポーツは本来「誰かと共に」「誰かのために」行うもの。
この本質を忘れてはいけないと思います。
特に育成年代の選手は、環境も指導も与えられる側になってしまいがちです。
自分からチームに与えよう、貢献しようという考え方はコーチが示していかないと、気付くことすらできない考え方です。
目立つことよりも、誰かのために動ける力。
この力こそが、チームを支え、勝つチームへと変えていく土台になります。
いい文化は「コーチから」始まる
与える選手を育てたければ、コーチ自身が“与える人”であること。
勝つためのプランやスケジュールだけでなく、
「どうすればこのチームに“いい空気”が根づくか」を考えること。
小さな声を拾うこと。
目立たない貢献を、チームの前で称えること。
それが、チームカルチャーを作る第一歩です。
私も、結果ばかりを追いすぎていたときには、こうした選手の存在を軽視していました。
でもあるとき、ひとりの選手の姿を見て、考えを改めました。
早く来てもくもくと練習の準備をし、
練習でもベストを尽くし、
数分のプレーでもチームを勢いづけ、
チームメイトのために汚れ仕事をこなせる選手。
その姿を見たとき、思ったんです。
こういう選手を、チームの中心に据えなきゃいけない。
「信頼される選手」を育てる問いかけ
「何ができるか」ではなく、
「何を与えられるか」を自ら問える選手を育てたい。
そのために、こんな問いを、まずコーチから投げかけます:
- 「いま、チームメイトのためにできることはある?」
- 「チームの雰囲気を変えるには、何ができる?」
- 「自分にしかできない貢献って、なんだろう?」
これらの問いを通して、選手の視点は少しずつ変わっていきます。
「自分のことで精一杯」だった子が、
「誰かのために何ができるか」を考え始める瞬間に立ち会えるのは、
コーチとして何より嬉しいことです。
まとめ|「与える」選手が、チームを変えていく
「このチームで勝ちたい」「このチームで戦いたい」というチーム作りに、必要なのは戦術でもスキルでもない。
そのためにはまず、チームを作るための「信頼される選手」が必要です。
その選手は、“与えること”を知っています。
だからチームを支え、周りが力を発揮できる環境をつくり、
最後には勝利につながっていく。
コーチはまず、問いかけることから始めていきましょう。
- 「いま、チームメイトのためにできることはある?」
- 「チームの雰囲気を変えるには、何ができる?」
- 「自分にしかできない貢献って、なんだろう?」
それこそが、
「勝ちたい」「このチームで戦いたい」という願いを、本当に叶えるチーム作りの始まりです。
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