選手に自信をつけさせたいと悩むコーチへ|自信を育む関わり方

声かけ・関わり方

「もっと自信をつけさせたい」
「自信を持ってプレーしたら、もっと上手くなるのに」
「でも、自信をどうやってつけさせればいいんだろう…」

そんなふうに悩んだことはありませんか?
私自身、コーチをしていて何度も同じ壁にぶつかりました。
選手に自信があれば一気に成長できるのに、その自信がなかなか育たない。
どう声をかければいいのか、どう導けばいいのか、迷う瞬間が必ずあります。

でも、本物の自信は「与える」ことはできません。
むしろ与えようと焦るほど、逆に選手から自信を奪ってしまうこともあるのです。

この記事では、「選手に自信をつけさせたい」と悩むコーチに向けて、奪わずに、そして自分で育てていけるよう励ます関わり方 をお伝えします。


自信は“与える”ものではない

「自信」とは単なる思い込みではなく、積み重ねた努力や経験に裏打ちされた確信です。
小さな成功と失敗の経験を繰り返す中で、「自分ならできる」という確信が育ちます。

トップアスリートの自信も魔法のように生まれたわけではありません。
何千回もの練習、数えきれない挑戦と失敗。
その裏付けがあるからこそ、大舞台でも揺るがない自信を持てます。

だからコーチの役割は、「自信を与える」ことではなく、選手が自信を育める環境をつくることにあります。


コーチが自信を奪ってしまう場面

一生懸命のつもりでも、コーチの関わり方次第で選手の自信は簡単に崩れてしまいます。
たとえば――

  • ミスを恐れさせる指導
    コーチが「なんでそんなミスを…」など失敗にばかり注目させてしまうと、選手が自分自身に「自分はダメだ」というレッテルを貼ってしまいます。
    小さな失敗のたびに刷り込まれれば、挑戦する意欲はしぼみ、自信を積み上げる機会が奪われます。
  • 挑戦を脅威に変えてしまう雰囲気
    失敗を許さない空気の中では、挑戦は“学び”ではなく“リスク”になります。
    安心感がなければ、選手は安全策ばかり選び、成長のチャンスを逃してしまいます。
  • 愛情や信頼を示さない態度
    失敗したときに冷たく突き放されると、選手は「自分は見放された」と感じます。
    「言わなくてもわかるだろう」では信頼は伝わりません。
    言葉や態度で示さなければ、次のチャレンジに踏み出す勇気は奪われてしまいます。
  • コーチ自身のイライラ
    機嫌をコントロールできないと、怒鳴ったり強い言葉を使ってしまいます。
    選手は顔色を伺いながら練習することになり、集中できません。
    少しずつ積み上げるはずの成功体験が途切れ、自信を育てる土壌が奪われてしまいます。

これらはすべて「自信を奪う」関わり方。
気づかないうちに、選手の可能性を削ってしまいます。


コーチが自信をつけさせるためにできること

「つけさせる」とあえて書きましたが、正しくは「選手が自分でつけていけるように励ます」ことです。コーチができる関わりを整理すると、次の3つになります。

1.信じて待つ

まずは、信じて待っていることを言葉で伝えることが大切です。

  • 「いつ伸びるかはわからない。だからこそ、みんな成長できると思ってる」
  • 「自分で次のステップへ登っていくことで自信がついていく。こつこつ頑張ろう」

コーチに信じてもらえているとわかるだけで、選手は安心して挑戦できます。


2.よい問いかけをする

「なんで?」という質問は、説明を求めているつもりでも、選手には詰問のように響くことがあります。
代わりに、次のステップを見えるようにする問いかけをしましょう。

  • 「どうしたかった?」
  • 「次はどうすればいい?」

「なぜできない?」はコーチが頭で考える問い。
「どうやったらうまくいく?」は選手と一緒に考えられる問いです。


3.成長のプロセスを共有する

選手が「どうしたい」と表現できた場面を見つけたら、すぐに共有しましょう。

  • 親指を立てて「見てたよ」と合図を送る
  • うなずくだけでも「認めてもらえた」と感じられる

小さな合図や言葉が、選手に「自分は前に進んでいる」という感覚を残します。


ほめることに頼りすぎない

選手に自信をつけさせたいと考えるとき、「とにかくほめること」に頼ってしまうケースが多くあります。
もちろん、ほめられて嬉しい経験は選手を前向きにし、必要な場面もあります。

しかし、コーチがずっと横でほめ続けることはできません。
試合でも練習でも、選手を常に見ていられるわけではありません。
カテゴリーが上がれば、ほめられる機会は減っていきます。

もし「ほめられること=自信」になってしまったら、
ほめられなくなった瞬間から、自信は下がってしまうのです。
私自身、シーズンを通して「ほめるコーチング」にトライしたことがあります。
しかし終盤には「ほめられるために行動する」選手ばかりになってしまいました。
バスケットを純粋に楽しむよりも、ほめられたいからバスケットをするようになりました。

だからこそ大切なのは、選手が自分で自信を育てていくプロセスを応援すること。
ほめることに頼らず、努力や挑戦を通して「自分で自信をつけられる力」を育むのが、コーチの大きな役割です。


まとめ

選手に自信を「与える」ことはできません。
でも、コーチの関わりひとつで自信を「奪ってしまう」ことはあります。

だからこそ大切なのは、奪わず、励まし、育てる関わり方です。
信じて待ち、問いかけで導き、成長を共有し、ほめることに依存させない。

その環境の中で、選手は「自分の力を信じる」ことを学び、やがて本物の自信を手に入れていきます。
それこそが、コーチにだからこそできる最高のサポートです。


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