チームづくりについて、学ぶ機会はほとんどありません。
選手時代に経験や、コーチになってからの体験をもとに、なんとなくやっていることが多いのではないでしょうか。
「どうやってチームを作ったらいいのかわからない」
「技術を教えるだけではだめ?」
「バスケットの構造だけ教えてもうまくいかないのはなぜ?」
どんなスポーツでも、動かすのは人。
だからこそ、みんなが“やりたくなる環境”をどうつくるかが大切です。
そのためにまず、コーチが選手に信頼を示し、関係の構造を整え、そして挑戦できる文化を育む。
チームが変わる道筋は、この3つにあると感じています。
ここでは、そんなチームづくりのヒントをくれる3冊を紹介します。
『岩田さん ― 岩田聡はこんなことを話していた。』
任天堂の元社長・岩田聡さんの言葉を集めた一冊。
読めば、「楽しさを中心に、人を信じて任せる」という姿勢がチームの空気を変えることに気づきます。
岩田さんは、社員一人ひとりと面談をしていました。
「立場で人を見るのではなく、直接話してみると、こんなに違う発見があるのか」と語っています。
そこには、“人を信じ、耳を傾ける”という姿勢が一貫していました。
一人ひとりが元気になれば、チームも元気になる。
その当たり前を、誠実に実践していくことの大切さ。
言葉の一つひとつに、人を大切にするリーダーの在り方がにじみ出ている本です。
- ウォームアップ前に選手一人と短く会話してみる
- キャプテンと面談し、最近気になっていることを聞く
- 「どうやったらチームがもっと良くなるか?」を一緒に考える
『あなたのチームは、機能していますか?』(パトリック・レンシオーニ)
技術や戦術の前に、“関係の構造”が崩れていないかを見つめ直すための一冊。
信頼不足/対立回避/責任の曖昧さ/目標不一致/成果への無関心――
この5つの機能不全に言葉が与えられるだけで、コーチはチームづくりの問題を「感覚」ではなく「構造」として捉え直せます。
私が特に印象に残ったのは、「信頼の欠如」です。
信頼を築くためには、相手に自分の弱みを見せる勇気が必要だと書かれています。
長い間、「強いコーチ=弱みを見せない存在」だと思っていました。
でも実際には、弱みを見せないことで、
「あなたたちを信頼していない」「信頼しきれていない関係だ」というメッセージを
行動で伝えてしまっていたのだと気づきました。
信頼とは、弱みを見せ合える関係です。
弱みを共有できない人たちの集まりは、うわべだけのグループです。
本当に強いチームとは、お互いの強さを知り、弱さを支え合えるチームなのだと感じました。
- 今日、選手やスタッフに助けを求めてみる
- 今日の練習について、「どう感じた?」と選手に聞いてみる
- チーム練習であえて罰則を設け、自分も同じ罰則を行う
『今いるメンバーで“大金星”をあげるチームの法則 ジャイアントキリングの流儀』(仲山進也)
「チームを安定させることばかり考えていたら、チームは前に進まない」――
この本からはそんな強いメッセージを受け取りました。
特別な補強や才能ではなく、
“言いたいことをぶつけ合って、相手を理解し、自分を理解すること”。
その繰り返しが、チームを強くしていきます。
いまいるメンバーを最大限に生かす発想は、育成年代の現場とも相性抜群。
「教える」だけがコーチの役目ではなく、
ときに課題をチームに投げ、考えさせることが、チームづくりにとって欠かせない役割だと気づかされました。
印象に残っているのは、初回練習を「自習」にするという実践例。
「一見、何のために?」と思うような取り組みが、
実はチームの自立を引き出すための仕掛けだったのです。
リーダーの言う通りに動くグループではなく、
自分たちで考え、動き、挑戦できるチームへ。
そのためにコーチがやるべきは「コントロール」ではなく「刺激」。
チームが勝手に動き出す環境をどうデザインできるか――
それが、チームづくりの本質なのかもしれません。
- 「次の練習をよくするために何を変える?」と選手に問いかける
- コーチ自身が答えを出さず、沈黙して待つ時間を持つ
- チームを固定化させる「自己主張しない・空気を読んで遠慮する」状態になっていないか考えてみる
おわりに|信頼・構造・挑戦のサイクルをつくる
チームづくりには「これで完成」という形はありません。
弱みを見せて信頼を示し、意見を言い合い関係を整え、挑戦を促してチームを育てる――
そのサイクルを回し続けることが、
チームを育てていくプロセスそのものです。
チームを育てることは、人を信じること。
お互いが何を考えているのかわからないから、怖くて動けない。
それではチームづくりはスタートしません。
まずコーチから、信頼を示し、話を聞くことから始めてみてはどうでしょうか。
本で学び、現場で試し、チームとともに育っていく。
そんなコーチでありたいと、3冊を読みながら強く感じました。
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