合宿は“練習量と時間を増やす”だけではありません。
今回の3泊4日の合宿では、ディフェンス強化を軸に、コンディショニング、チーム運営、そして選手一人ひとりの意識改革まで一気に進めることができました。
この記事では、現場で実際に行った取り組みと、そこで得られた変化を4つのテーマに分けて紹介します。
1. 技術面:ディフェンス強化
試合で課題を洗い出し、翌日から即改善(1日目)
1日目は丸一日、練習試合を行いました。
目的は勝つことではなく、課題の洗い出し。
明日からの合宿のテーマであるディフェンスの課題を、選手に体感してもらいました。
なので、合宿と同じとように午前はゾーンディフェンス。午後はマンツーマンディフェンスで、全員が試合に出場しました。
試合中に見えた守備のスキル不足や判断ミスは、すべて翌日以降の練習テーマとしてメモしました。
考えなくても動けるマンツーマンへ(2日目午後・3日目午後)
課題として見えたのは、
・初心者も多くいる中で、マンツーマンでマークマンだけしか見れず、ヘルプに入れない
・マークマンからの距離をなんとなくで決めてしまう
・ディフェンスの判断に集中できない
そこで、「考えなくても適切なポジショニングにつける」ことをゴールに設定しました。
ポイントは2つ。
- ドライブのヘルプポジションに入る
→ドライブのスペースを消し、オフェンスの選択肢を減らす
→自分のマークマンに戻ることだけを考えられる(中途半端なポジションだと、逆モーションになってどちらも守れない) - ボールマンにプレッシャーをかける
→大会の目標としているゲームでは、何もしなくても相手がミスしてくれるレベルではない
→積極的に相手に制限をかけることで、後ろや横のプレーヤーと連携しやすくする
2日目午後 目標:考えなくても適切なポジショニングに着ける
・ウォーミングアップ
・2on2 ツーガードポジションで、ボールマンディフェンスとドリブルヘルプポジションの確認
・4on4 ツーガード・ツーウィングポジションで、同上
・4on4 ツーガード・ツーウィングポジションで、ベースラインドライブ→ヘルプ&ローテーション
・4on4 ツーガード・ツーウィングポジションで、オフェンスカッティング→ポジションチェンジ
・4on3 7秒たったら→4on4ライブ
3日目午後は、目標:マッチアップを見つける(ディフェンスに必要な判断)
基本的には2日目午後のメニューをこなしながら、3日目の午前にゾーンで行った要素を追加。
・ボールマンのディレクション(進行方向を限定する守り方)
・ハンズアップ(常に手を上げてパスやシュートを制限)
・ディフェンストーク(声で味方に状況を伝える)
さらに、トラップシチュエーションにも挑戦。
・オールコート ラン&ジャンプトラップ→5on5 (2人で迎えに行って挟みに行くディフェンス)
・オールコート チェイストラップ→5on5(2人で追いかけて挟みに行くディフェンス)
ゼロから取り組むゾーンディフェンス(3日目午前・4日目午前)
ゾーンディフェンスの課題は、
・U15カテゴリーでは行われていないため、イメージがない
・ゾーンになると出てくるチーム共通の用語がわからない
・基本的な立ち位置と動き方がわからない
そこで、「形と用語の理解」をゴールに設定しました。新入生が多いのでいい機会です。
ポイントは2つ
- トーク
→特に前にいる人が、見えていない場所の情報共有が必須
→「何番いった」ではなく「ハイポストいった」や「コーナーいった」といる位置を伝える - ・ディレクション&ハンズアップ
→パスコースを限定し、ロブパスを誘発
→基本的にはボールマンの方を向いて、圧力を継続する
3日目午前 目標:言葉を理解して、オールコート2-2-1とハーフコート2-3ゾーンの形を覚える
・ウォーミングアップ
・用語の説明(ボールサイド・ヘルプサイド、ディレクション(方向づけ)、しめる、ヘジテーション、トラップシチュエーション、ロブパス)
・ディフェンスフットワーク(ディレクションドリルの追加)
・5on5 2-3ディフェンスポジション
・8on5 2-3ディフェンスポジション
・5on5 2-2-1ディフェンスポジション
4日目午前は、目標:オールコート1-2-1-1とハーフコート3-2ゾーンの形を覚える
・ウォーミングアップ
・ディフェンスフットワーク(ディレクションドリルの追加)
・5on5 3-2ディフェンスポジション
・7on5 3-2ディフェンスポジション
・5on5 1-2-1-1ディフェンスポジション
・5on5 チェンジングディフェンス
効果的だったのは「8on5 2-3ディフェンスポジション」や「7on5 3-2ディフェンスポジション」でした。
数的不利な状況で、守るべきスペースが明確になり、動き方への理解が一気に進みました。
また、最終日の5on5では見事にロブパスをスティールし、その光景が選手の合宿の達成感を大きく上げました。
2. 体作りとコンディショニング
トレーナーによる講座で意識改革(2日目午前)
外部トレーナーを招き、体のケアや整え方を学びました。
何といってもケガなどをせず、練習を継続できることが上達の早道です。
現状のコンディションのチェックから、ストレッチやセルフケア方法を指導していただきました。
選手たちの反応も良く、その日の練習から早速取り組んでいました。
毎日のケア習慣化
チームで時間を取ってストレッチの時間を取っていました。
しかし、それでは練習前にだけコンディショニングをすればいいと学んでしまいます。
練習前に自分で時間を作り、取り組んでもらうようにし、寝る前や練習後にも行うようになることを目指してリカバリーを意識づけました。
コンディションを自分で整えるという考え方は、「ケガは仕方のないこと」ではなく「けがの予防はコントロールできる」という意識につながっていきます。
3. チーム運営と役割意識
マネージャーが主体的に動く
マネージャーにも主体的になってほしい。
練習ではいつも通りサポートができていました。
しかし、それ以外の時間は、選手の後ろを固まってついていく状態で、
マネージャーが初日から受け身な状態でした。
1日目の夕食後 マネジメントミーティング
「マネジメントをしてください」と端的に伝えました。
2日目の朝、選手よりも少し前に来て食事の準備
それを見て、選手もてきぱき準備を始めました。
2日目の夕食後 マネジメントミーティング 今日の振り返り
「選手よりも早く、食事会場に来て準備できた」
「朝の練習の水分補給用のタンクのところでバタつきました」
「先輩に頼りっぱなしで、自分から動けていません」
「水分がなくなった選手に早めに声を掛けます」
など、課題をもとに次の日にやることが見えてきたようでした。
3日目の夕食後 マネジメントミーティング 今日の振り返り
「みんなでやるよりも分担したほうがいい場面があったので、コミュニケーションをとります」
「給水後の選手に声かけられました」
「先回りして、荷物の確認や最後の確認ができました」
具体的に指示をしてそれをやってもらうのではなく、何をするのかも任せたことで、
マネジメントってなんだろうと考えながら、役割への責任感と主体性が目に見えてよくなりました。
また、2日目の午前に来ていただいたトレーナーさんに
「先回りが大事」と言っていただいたのも、いい刺激となったようです。
チーム全員で行う準備・片付け
食事やチームの荷物の準備はお互い気を利かせて行います。
気が利くメンバーがずっとやるのではなく、こちらから声掛けをしたりしながら、
できるかぎり自分から行います。
状況把握と気配りができるようになり、チーム全体の動きがスムーズになりました。
4. 意識改革:コンフォートゾーンからラーニングゾーンへ
メンバーの組み合わせを崩して新しい挑戦
いつものメンバーで、いつものグループで練習をしてしまう。
確かに効率はいいかもしれません。
色々な選手とマッチアップしたり、チームを組むことで要求されることが変わります。
その環境の変化が、学びを引き出します。
安心安全を超えて、チャレンジするよう、コンフォートゾーンにいるなと判断したら逐一集合し、指摘しました。
新しい組み合わせで練習を行うことで、うまくいかない練習の時間帯などもありましたが、
最初はぎこちなくても、教え合いや工夫が生まれ、新しい関係性ができました。
基本練習の「なぜ」を伝える
「基本」は朝顔の支柱のようなもの。
うちのチームの練習は基礎や基本の練習がたくさんあります。
選手たちに「基本」とは何かのたとえ話をしました。
試合中にうまくいかないことがあったり、不安でプレーができなかったりするときに、
戻ってこられる場所を作るために「基本」を作る。
この説明で、選手の姿勢が変わりました。
一歩踏み出した瞬間
最終日、遠慮がちだった選手が練習の先頭に並び、チームを引っ張る姿を見せました。
これも合宿の成果の一つです。
まとめ|合宿から日常の練習へ
技術練習、体作り、チーム運営、意識改革――。
合宿は多方面の成長を一度に促せる貴重な機会です。
「イベント(合宿)だからできた」ではなく、日常に持ち帰って継続することでチームの力になります。
まず、1回できた。
今回の経験は、必ずこの先のシーズンにも生きてきます。
関連書籍
『エコロジカル・アプローチ』
環境や練習設定を工夫して、選手が自ら学ぶ力を引き出す指導法を解説。コンフォートゾーンを抜け出す練習設計のヒントが詰まっています。
『マインドセット』(キャロル・ドゥエック)
「挑戦」や「失敗」を成長の糧にする“成長マインドセット”を提案。意識改革や選手の挑戦促進に役立つ考え方が得られます。
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