練習を見ていると「なんでできないんだろう」とイライラしてしまう
気づけば「ここがダメだ」と言う回数の方が多い
「何回言ったらわかる?」
気がつけば、そんな言葉ばかりが口から出ていませんか?
限られた練習時間の中で成果を求められると、つい短所にばかり目がいってしまいます。
でも、選手の良さも見て伸ばすことができるなら――。
この記事では、育成年代の選手を伸ばすために大切な視点を整理します。
短所を矯正するのではなく、長所に光を当てることで選手が変わり、チームも変わっていく。
その具体的な考え方と声かけの工夫をお伝えします。
選手を伸ばすことはチームを伸ばすこと
個人の成長がなければ、チームの成長もありません。
特に、育成年代のチームでは、一年毎にチーム編成が変わるため、連携を高める時間が限られています。
個々を成長させていき、チーム編成が変わったとしても対応できる力が必要です。
また、試合中に一人の選手がエネルギーを与えるプレーをすれば、チーム全体の雰囲気は一気に変わります。
だからこそ、「選手をどう伸ばすか」が育成年代のコーチにとって最も大切なテーマになります。
成長の土台はマインドセット
選手を伸ばすために、まず必要なのは「マインドセット」です。
どんなに良い練習や指導、環境があっても、受け取る姿勢がなければ力になりません。
練習中、アドバイスを素直に試してみる選手は、どんどん吸収して上達していきます。
試合中でも、仲間やベンチからの声をすぐに切り替えて行動できる選手は、プレーの幅が広がり、チームにエネルギーを与えます。
逆に、「自分はこうだから」と挑戦しない姿勢では、せっかくの経験を自分の成長につなげることができません。
「まずはやってみる」――この気持ちがあるだけで、練習や試合のすべてが“成長の材料”になるのです。
短所にこだわるより、長所に光を当てる
苦手を克服するには時間がかかります。
ときには、シーズンが終わっても改善しないことさえあります。
育成年代の時間は限られています。
だからこそ、短所ばかりに注目するのはもったいない。
まずは選手の「強み」に光を当てましょう。
自分のプレーが認められていると感じれば、選手は前向きに挑戦できるようになります。
長所を伸ばすことが、新しい力を学ぶ一番の近道になります。
強みを活かしながら苦手も学ぶ
例えば、ドライブが大好きでどんどん仕掛けていく選手がいました。
ただ、選択肢がドリブルしかないため、相手に先読みされて無理なシュートになることが多かったのです。
そこで「ドリブルよりパスをしなさい」と言ってしまうと、選手の良さを消してしまいます。
私はこう声をかけました。
「ドリブルでディフェンスを自分に集められている、いいプレーだよ! そのときノーマークの選手もいるから探してみよう」
得意のドリブルを活かしながら、自然とパスも学んでいく形です。
それだけでチーム全体のプレーの幅が広がっていきました。
競技は違っても同じです。
野球でも、守備ができるなら守備で少しでも使う。サッカーでもテクニックがないところを見るのではなく、足が速いことに目を向ける――。
どのスポーツでも「強みを活かしながら新しい力につなげる」視点は共通しています。
褒めたり叱りながら、成長を共有する
選手を伸ばすためには、成長を共有することが大切です。
5回挑戦して3回失敗しても、1回成功したらすぐに反応する。
1回目を見つけたり、1回目の成功を選手と共有する。
「ナイスプレー!できるじゃないか!」と一緒に喜ぶことで、選手は次の挑戦に踏み出せます。
一方で、チームで決めたルールを守らない、仲間を傷つける行為をしたときは、はっきり叱る必要があります。
特に、チームメイトや練習に対してリスペクトがないときには、指摘します。
そこが、選手の次の成長につながる部分だからです。
それは、技術以上向上してほしい“人としての成長”にかかわる部分です。
コーチとしては、やっぱり「すぐにできるようになってほしい」ですよね。
できるようになるために、練習や声掛けを工夫しているので当然です。
でも選手の成長には時間が必要。
そのギャップの中で、指導者の「我慢」が求められます。
失敗ばかりを指摘するのではなく、成功の瞬間を待つこと。
これこそが選手を伸ばすコーチングです。
コーチの面白さはここにある
これはダメ、あれもダメ――。
もし評価するだけがコーチの仕事だとしたら、やっていても面白くありません。
評価は「現状を知るため」にするものです。
コーチの面白さは、現状を把握したあとに、次の道をどんどん見せて、
選手やチームが成長していく姿を見ることにあります。
短所ばかりを見ていると「ダメダメおじさん」になってしまう。
だからこそ、選手の長所を見つけ、次のステージを一緒に探していけるコーチを目指してみてはどうでしょうか。
関連書籍
※本の商品リンクにはアフィリエイトを利用しています。
※読んでくださる方にとってプラスになる、学びを深められるものを選んでいます。
『マインドセット ―「やればできる!」の研究』(キャロル・S・ドゥエック著)
コーチも選手の挑戦を受け入れ、成長していくための「しなやかな考え方」を解説。
今回の記事の「マインドセット」部分と直結します。
『ダブル・ゴール・コーチ』(ジム・トンプソン著)
勝利と人間的成長を両立させる指導法を提案。
コーチ自身のあり方やバランスを考えるうえで参考になります。
『育てる技術』(ジョン・ウッデン著)
名将ウッデンが語る「人を育てる」哲学。
選手の長所を見つけて伸ばす視点を深めたいコーチにおすすめ。
関連記事もどうぞ
・選手のやる気が出ない原因はマインドセットにあった!固定マインドセットから成長マインドセットへの転換法
「やる気がない」の裏には、考え方のクセが隠れているかもしれません。固定マインドセットから成長マインドセットへ変えるヒントを解説します。
・コーチングの実践方法|選手が動き出す“問い”と課題の与え方
選手を伸ばすには、ただ指示するだけでは不十分です。問いかけや課題の与え方を工夫することで、自ら動き出す選手を育てられます。
・『嫌われる勇気』に学ぶ|「ほめられない…」と悩む指導者が楽になる2つの視点
「うまく褒められない」と悩むコーチにこそ読んでほしい内容です。ほめるよりも“勇気づけ”を重視する視点が、指導をぐっと楽にしてくれます。
コメント