育成年代で試したい、声かけと関わり方
「チームに、やる気がない選手がいて…」
「声をかけても、返事はするんだけど…」
私もそんな悩みを抱えるコーチです。
選手の“やる気のなさ”を表面的に受け取ってしまうと、うまくいかないことが多いのも事実です。
今回は、やる気が見えない選手に対して、コーチとしてどう声をかけ、どう関わるかを考えていきます。
「やる気がない」って本当?
ある選手が、練習中ずっとぼーっとしていたり、ずっと時計を気にしていたり、教えていても反応がなかったりする。
目も合わないし、言葉も少ない。つい、「やる気がないな」と思ってしまいます。
でも、その態度の奥にある“本当の声”を聴こうとしたことはあるでしょうか。
教育心理学者のハイム・ギノットは、子どもとの関わりの中でこんな場面を紹介しています。
はじめて幼稚園に来た子の一言
ある子どもが初めて幼稚園に来た日、教室の壁を見てこう言いました。
「この下手くそな絵は誰が描いたの?」
それを聞いた母親は、「そんなこと言っちゃダメでしょ!」と叱ります。
でも、先生はこう答えました。
「ここではね、下手くそな絵を描いてもいいんだよ。」
これは、子どもの“乱暴な言葉”の奥にある「ここはどんな場所なんだろう」「自分は受け入れてもらえるだろうか?」という不安や探りを汲み取った、すばらしい対応です。
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「コーチの出方を探っている」こともある
やる気がないように見える選手も、実はこうしてあなた(コーチ)の出方を見ているのかもしれません。
・ どうせ自分は期待されてない
・ どうせまた怒られるだけ
・ 自分がここにいていいのかもわからない
・ 頑張ってできなかったらどうしよう
そんな思いを抱えていたら、態度に出ないのも無理はありません。
現在地を確認する関わり
やる気を引き出す前にまずやるべきことは、選手の“現在地”を確認することです。
・ 最近どう?
・ 助けられることはある?
・ 困ってることある?
・ 今どんなことを考えてる?
こうした問いかけや会話の中で、選手の心の中にあるものに耳を傾けることが、スタートになります。
「自分には影響力なんてない」と思っている子たち
ある時、やる気が見えない選手にこんな話をしました。
「〇〇の声掛けとか行動が、チームにどんな影響を与えてると思う?」
選手はキョトンとした表情で、
「そんなこと、考えたこともなかったです…」
自分の存在が周りに与える影響や価値を、過小評価している選手は少なくありません。
でも、だからこそ一緒に考えていきたいのです。
「〇〇の影響力はとても大きいから、チームが真似をして同じように行動するようになるよ」
「〇〇は、どういうチームにしていきたい?」
ここに意識が向くと、選手が変わることがあります。
やる気が出る練習を「つくる」
選手のやる気を引き出すのは、言葉だけではありません。
練習のつくり方も大きな鍵になります。
ポイントは「ちょうどよさ」
ダニエル・ピンクの『モチベーション3.0』では、「やる気を引き出す条件」として、“ゴルディロックスの法則”という考え方が紹介されています。
おとぎ話『ゴルディロックス』では、女の子が「熱すぎず冷たすぎず、ちょうどいい温度のスープ」を選びました。
これはつまり、人は「簡単すぎても難しすぎてもダメ」で、「ちょっと背伸びすれば届く課題」に最もわくわくするという法則です。
練習で「失敗してもいい、でもチャレンジングで面白い」内容にできているかどうか。
試合に近い状況をつくったり、自分の役割を意識できるドリルにしたり、
選手が“動きたくなる”ような仕掛けが、選手のやる気に火をつけます。
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長い目で、育てるということ
コーチとして意識したいのは、短期的な結果ではなく、長期的な変化です。
選手がまだ「安心して失敗できる環境なのか」を探っている最中かもしれません。
もしかすると、こちらが出した課題が合っていなかったのかもしれません。
すべてがうまくいっているなら、コーチの出番はないのかもしれません。
うまくいかないからこそ、一緒にゴールへ向かうコーチの存在が意味を持ちます。
それが、育成年代のやりがいであり、私たちの腕の見せ所です。
まとめ:やる気が見えないときこそ、信じる力を
「やる気がない」選手は、やる気がないのではなく、まだ“出せていない”だけかもしれません。
・ 選手の現在地を確認する
・ 出方を探っていることを理解する
・ 声かけと練習設計で小さな変化を導く
そんな一歩一歩が、やがて選手を大きく動かしていきます。
上手くいかない、選手のやる気が見えないときこそ、コーチの活躍の場面です。
コーチのかける言葉、つくる環境、そして「信じて関わる姿勢」が、
必ず、チームをポジティブな方向に進めます。
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