「メンタルが弱いので、コーチから厳しく指導お願いします。」
保護者の方から実際にこう声をかけられたことがあります。
指導を続けていると、このような言葉を耳にする機会は少なくありません。
確かに選手によっては──
- ミスの後に戻らない
- リバウンドを取りにいかない
- コンタクトを嫌がって消極的なプレーになる
- うまくいかないと自分勝手なプレーをし始める
こうした様子を見ると、保護者として「なんとかしてメンタルを強くしてほしい」と願う気持ちは、私にもよく伝わってきます。
ですが、家庭でプレーについて厳しく追及したり、親が一緒に自主練を始めたり──
そういった関わり方は、逆効果になっているかもしれません。
家に“味方”がいることが、子どもを強くする
私の経験上、気持ちが強く見える選手ほど、家庭ではとても優しい親御さんに支えられていることが多いです。
その子たちがコートで頑張れるのは、家庭が「安心できる場所」だからかもしれません。
子どもはコートの上で、実はものすごくたくさんの不安と戦っています。
- 走るのがしんどい…
- コンタクトは痛い…
- 味方にプレーを改善するように言われる…
- ボールをまた取られた…
- 同じミスばっかりする…
そしてそこに加えて、
「帰ったら親に怒られるかも…」
そんな思いが乗ってしまったら、どうなるでしょうか?
帰り道こそ“心のケア”ができる時間に
送り迎えや観戦などをすることで、子どもは「自分は大切にされている」と感じることができます。
一方で、帰りの車内が試合の“反省会”になったり、プレーの“感想大会”になったりすると、子どもにとってはしんどい時間になりかねません。
あくまでも、子どもが何を感じているのか、どう思っているのかを話せる場。
または、黙っていても安心できるような“無言のサポート”を心がけるだけでも、十分な支えになります。
いい経験も悪い経験も、成功も失敗も──
子ども自身の「体験」を奪ったり、大人が「上書き」してしまわないように。
そのままの思いを、大切に扱ってあげることが必要です。
厳しさを受け止めるには、土台が必要
コーチとして、厳しいことを伝える場面もあります。
でも「厳しさに耐えられるか」は、子どもの性格や成長段階によって異なります。
「厳しくしてください」と言われたからといって、
その子に“乗り越える力”があるとは限りません。
選手が困難を乗り越えるには、まずその子にとっての「安心の土台」が必要です。
そして、その土台は──家庭にこそあると、私は思います。
まとめ
子どものメンタルは、「もっと厳しく」と外から叩いて育つものではありません。
むしろ、どんな時でも味方でいてくれるという”安心感”の中でこそ、強さは育っていくのではないでしょうか。
家庭という土台がしっかりしていれば、子どもはチャレンジできます。
コートで失敗しても、また前を向ける。
そんな心を、ぜひ一緒に育てていきましょう。
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『子どもの話にどんな返事をしてますか? 親がこう答えれば、子供は自分で考えはじめる』
中川李枝子・佐藤弘(草思社)
子どもの言葉にどう返すか。その返事の仕方ひとつで、子どもが「自分で考える」姿勢に変わるかどうかが決まってきます。
正しい答えよりも、寄り添う姿勢を学びたい方にぴったりの一冊です。
『GRIT やり抜く力』
アンジェラ・ダックワース(ダイヤモンド社)
「才能よりも大切なもの」があると気づかせてくれるロングセラー。
メンタルが弱いと感じる子に必要なのは、あきらめず続ける“やり抜く力”。その育て方のヒントが詰まっています。
『モチベーション3.0』ダニエル・ピンク(講談社)
「外からのごほうび」や「厳しさ」だけではやる気は続かない。
本書は、内側から湧き上がる“内発的動機”の育て方を教えてくれます。
子どものモチベーションを育てたい保護者におすすめ。
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