「うまくいっているから今の先発メンバーで行こう」
「このメンバー以外は出せないな」
そうやって、チームとして先発メンバーを固定し続ける――。
始めこそ成果は出るかもしれません。
けれど、選手自身も同じように満足してしまいます。
「ゲームメンバーに入ったからいいや」
「先発メンバーに入ったからいいや」
「一度目標を達成したからいいや」
――そうやって、どこかで歩みを止めてしまいます。
その安定は、じわじわと選手の成長を止め、チームの伸びしろを奪っていきます。
なぜなら、安定は挑戦を奪うからです。
挑戦のない環境では、選手は現状に甘え、チーム全体の力も停滞してしまいます。
「チームを強くしたい」と思っているのに、
気づけばコーチ自身が“安定の罠”を仕掛けてしまっている――。
これは多くの現場で起きている落とし穴です。
この記事では、
- 『GIANT KILLING』のタツミ監督
- 日本ラグビーを変えたエディー・ジョーンズ
- 今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則 『ジャイアントキリング』の流儀
この3つの視点から、安定を壊し、挑戦を生み出すチームづくりのヒントを紹介します。
<div class=”hint-box”> <div class=”hint-title”>✅ やってみたい人はここから1つ</div> <ul> <li>今の練習が「安定しすぎていないか」を振り返る</li> <li>選手が挑戦できている場面を数えてみる</li> <li>「揺らぎ」が少ないと感じたら小さな変化を加える</li> </ul> </div>
タツミ監督に学ぶ:「安定させない」指導
マンガ『GIANT KILLING』は、監督が主人公という珍しい作品です。
着任早々、意図も説明せずに選手を走らせてスタッフに計測させたり、練習メニューを決めずに選手を放置したり――破天荒なやり方でチームをかき回します。
しかしその狙いは、チームに刺激を与えること。
ポジションを固定せず、時には新人を抜擢し、練習方法にも常に変化を加える。
選手に新しい気づきを与え、チームに一体感を生み出す。
タツミ監督がやっているのは「安心させないこと」ではありません。
常に選手に新しい挑戦を与え続けることです。
チームが安定した瞬間、選手は惰性に陥る。
だからこそ監督は揺らぎを仕掛け、選手に「次の成長」を迫るのです。
<div class=”hint-box”> <div class=”hint-title”>✅ やってみたい人はここから1つ</div> <ul> <li>ポジションを1つ入れ替えて練習してみる</li> <li>非利き手オンリーのゲーム形式を取り入れる</li> <li>控え選手の強みを活かす役割を与える</li> </ul> </div>
エディー・ジョーンズに学ぶ:「安心しているチームは弱い」
ラグビー日本代表を率いたエディー・ジョーンズも同じ考えを持っています。
彼は「安心しきったチームは弱い」と明言し、常に競争と挑戦を仕掛け続けました。
スタメンを固定せず、練習の評価を透明にし、常に「次の一手」を考えさせる。
フィードバックは長い説教ではなく、短く具体的に「行動」に落とし込む。
選手がすぐに実践できるようにすることで、挑戦と改善のサイクルが回り続けるのです。
スタメンを外されてへこむ選手の表情を見て彼はこう言います。
「非常に満足しています」
「ここから、彼がどう行動するかを見ています」
試合前や試合中は選手は不安です。
選手が不安を乗り越え、仲間を信じ、自分を信じて挑戦できるか――。
そこにこそ、チームを強くする本質があるのです。
<div class=”hint-box”> <div class=”hint-title”>✅ やってみたい人はここから1つ</div> <ul> <li>スタメンを「練習ポイント制」で1枠だけ流動にする</li> <li>フィードバックを「動作+状況+次アクション」で10秒にまとめる</li> <li>練習終盤の勝ち筋条件を1つだけ変更する</li> </ul> </div>
※エディージョーンズ監督がどのように挑戦文化を作ったのか、映像で学ぶことができます。
※DVDの紹介リンクには、アフィリエイトを利用しています。
『ジャイアントキリング』の流儀に学ぶ:今いるメンバーで勝つ
書籍『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則 『ジャイアントキリング』の流儀』は、まさに「今いるメンバーでどう戦うか」を体系的に整理しています。
理想の補強や特別な才能を求めるのではなく、手持ちの選手の強みを最大化すること。
これこそが“弱いチームが強くなる法則”です。
チームづくりの段階を
・フォーミング(形成期):自己主張せず、空気を読んで遠慮する
・ストーミング(混乱期):自己主張させ、衝突させる
・ノーミング(規範期):お互いの価値観が衝突した結果、チームの行動規範が作られる
・トランスフォーミング(変態期):より大きなチームづくりへ
にステージ分けしています。
そして、この法則を支えるのはストーミング(混乱期)です。
小さな揺らぎを日常に組み込み、挑戦を当たり前にすること。
チームに衝突を起こし、自分たちが考えていることのすり合わせをどんどん行うこと。
「このままでいいや」と空気を読んで、お互いをわかったふりをしているフォーミングからの脱出が、
“偶然の大金星”ではなく、“必然の成長”を生み出します。
<div class=”hint-box”> <div class=”hint-title”>✅ やってみたい人はここから1つ</div> <ul> <li>今いるメンバーの「役割再定義」を1人だけ行う</li> <li>努力が見えるKPI(例:ルーズ1本=+1点)を導入する</li> <li>月1で「役割シャッフル・デー」を設定する</li> </ul> </div>
まとめ:安定を壊して挑戦文化をつくる
チームを強くする方法は、安定の中に隠れていません。
「安定を壊し、挑戦を仕掛ける文化」こそがチームを強くするのです。
- 安定に甘えさせず、小さな揺らぎを加える
- 不安を乗り越えさせるために、わざと安定しないようにアプローチする
- 今いるメンバーの強みを最大化する
コーチの役割は「安心を守ること」ではなく「挑戦を仕掛けること」です。
その小さな挑戦が、やがてチームの文化を変えていきます。
あなたのチームに――今日から、1つ揺らぎを加えてみませんか?
関連書籍
※以下の商品リンクにはアフィリエイトを利用しています。
※さらに学びを深めたい方への参考情報として掲載しています。
・『GIANT KILLING』
サッカークラブの監督・タツミが主人公の人気漫画。
破天荒な采配と、安定を嫌って挑戦を仕掛け続ける姿は、まさに「安定を壊す」コーチングそのものです。
現場で悩むコーチに、物語を通して“刺激を与え続けるリーダー像”を学ばせてくれます。
・プロフェッショナル 仕事の流儀 ラグビー日本代表ヘッドコーチ エディー・ジョーンズの仕事
2015年W杯で日本代表を南アフリカに勝利へ導いた、エディー・ジョーンズの流儀を追ったドキュメンタリー。
「安心しきったチームは弱い」という哲学が、リアルな映像とエピソードで描かれています。
“挑戦を与え続ける指導者”の姿を目に焼き付けたい方におすすめです。
・今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則 『ジャイアントキリング』の流儀
「今いるメンバーで大金星をつかむ」ためのチームづくりを体系的にまとめた一冊。
チーム発達の4つのステージ(形成期・混乱期・規範期・変態期)をわかりやすく整理し、現場で使えるヒントが満載です。
安定を壊し、必然の成長を起こす“実践的な法則”を学べます。
関連記事
努力しているのに伸びないチーム|挑戦を習慣化するチーム文化
一生懸命やっているのに成果が出ない…そんなチームに共通するのは「挑戦不足」。
日常の中に小さな挑戦を組み込み、成長を加速させる方法を紹介しています。
練習メニューは作るだけじゃ足りない!コーチに必要な“設計力”と“伝達力”
練習を回すだけではチームは伸びません。必要なのは「設計」と「伝達」という2つの力。
練習がまとまらない原因と、改善のヒントをまとめています。
チームがバラバラ…原因はリーダー?|『あなたのチームは、機能していますか』で学んだ立て直し方
雰囲気が悪く、まとまりを失ったチームをどう立て直すか。
本から得たヒントをもとに、信頼関係を築き直す具体策を解説しています。
コメント