負けた時、どんな声をかけたらいい?
バスケットは相手がいるスポーツです。
どれだけ準備しても、相手が強ければ負けることもあります。
テストでも同じ。真剣に勉強しても、難問ばかりなら高得点は取れない。
それと同じように、負けたからといって、それまでやってきたことのすべてがダメだったわけではありません。
でも、選手たちの中にある悔しさ、喪失感、自分を責める否定的な気持ちは本物です。
だからこそ、慎重に言葉を選ぶ必要があります。
受け止めた上で、表面的な励ましではなく、「次につながる言葉」を選手は待っています。
この記事では、実際にかけた言葉とあわせて、“悔しさを成長につなげる3つのヒント”も紹介します。
実際にかけた言葉|その悔しさを、次へつなげよう
①「勝ちを目指してプレーしていたんだから、悔しいのは当然」
「この結果は、“勝ちを目指してプレー”してきたんだから、嬉しいわけがない。
悔しい。だからこそ、次に負けないためにできることがある。
勝負は勝つこともあれば負けることもある。
いいチームであるかどうかは、この負けのあとに何をするかが決める。」
勝ちを目指して努力してきた選手に、「悔しい」という感情にまず寄り添うこと。
そのうえで、「この悔しさを生かす行動」へとつなげるのが大事だと思っています。
②「勝ちからも負けからも、学べるチームが強くなる」
ある試合後、キャプテンが「集合お願いします」と声をかけてくれました。
選手たちはうつむいていました。
「今日できることは全部やった。それは間違いない。
もし次の勝負に勝ちたいなら、今日の負けを無駄にしないこと。
負けて悔しいなら、自分たちをもう一度見直そう。
勝ちからしか学べないチームになるのではなく、負けからも学べるチームになろう。」
結果とプロセスを分けて、きちんとプロセスを認める。
言葉は短くても大丈夫です。大事なのは「一緒に前を向く」ことだと感じています。
コーチ自身の実体験|負けが生んだ“本気の成長”
私が選手として初めて日本一になった年、決勝で当たったのは、インターハイで負けた相手でした。
当時の仲間たちは、次に対戦する”その日”に向かって、練習に取り組みました。
その相手がいたから、ぼやっとした目標が明確になった。
相手の存在が、日々の行動の“意味”になっていたんです。
コーチとしても、再戦というシチュエーションは指導のチャンスだと感じます。
選手たちの目標が具体性を持ち、集中力が一段と高まる。
チームが共有している原点が“力の源”になる瞬間を何度も目にしてきました。
負けから得られる3つのヒント
悔しさを受け止めたあとに、どう次へつなげるか。
ここでは、私が指導現場で感じてきた「負けから得られる3つのヒント」を紹介します。
① 「負けパターン」を知り、行動に活かす
負けたときこそ、自分たちのプレーを冷静に見直す絶好の機会です。
どこで崩れたか、どうすればそれを止められたか、なぜ流れが渡ってしまったのか。
ただの反省会ではなく、“行動を変えるための分析”ができるかどうかが大切です。
試合直後は前を向ける声掛けを行い、翌日以降に「負け方を見つける」時間を作っています。
すると、選手から次の行動を変える言葉が出てくるようになります。
② 強い相手を通して「自分たちの可能性」に気づく
強い相手にぶつかることで、「ここまでできる」「まだ足りない」が明確になります。
相手の強さを認めることは、自分たちの限界を押し広げるきっかけになります。
実際に、「負けたけどこのプレーは通用した」という経験は、次の試合への大きな自信になります。
また、「もっと強くなるには?」と自分たちで問いを立てる機会にもなります。
③ チーム・選手の本当の強さが見える
一緒に悔しがって、一緒に立ち上がる。
そのプロセスが、チームの“絆”や“信頼”を深めてくれます。
次の練習から1番に来るようになった選手、仲間とのコミュニケーションを密にとるようになった選手。
そういったチームの“心の強さ”や“立ち直る力”は、負けたときにこそ見えてきます。
これは技術や戦術ではなく、「人として、チームとして、どう在るか」という問いにつながります。
負けはつらい。でも、つらい中で“誰かのために行動を起こせる選手”は、次に勝つための本当の力を持ち始めています。
まとめ|負けの先にある“変化”を信じて
負けは、選手にも、コーチにも、痛みを伴うものです。
そこから、その経験を「終わり」にするのではなく、「次へのはじまり」に変えられるかどうか。
それを決めるのは、関わる大人の言葉と姿勢です。
悔しいときに、そばにいる人が信じてくれる。
そうした関係性が、選手にとって本当の財産になると信じています。
関連書籍📖
『敗北のスポーツ学』(井筒陸也)
「どうしても負けたくなかった」
「もう一度やり直せたら…」
そんな選手や指導者に向けて、“敗北の意味”を真正面から問い直す一冊です。
勝つことが全てではない。けれど、負けから目をそらしても成長にはつながらない。
そう語るこの本は、悔しさの中に立っている人の背中を、静かに押してくれます。
『嫌われる勇気』(岸見一郎・古賀史健)
負けた選手に、ただ「頑張ったね」と言うだけでは響かないときもあります。
本当に必要なのは、“勇気づけ”。
『嫌われる勇気』は、「課題の分離」や「承認ではなく信頼」といった考え方から、
他人の人生に対してどう関わるかを深く教えてくれます。
落ち込む選手と向き合うコーチにも、大きなヒントになる一冊です。
『育てる技術』(ジョン・ウッデン)
負けたあとにどう関わるかは、コーチの“育てる力”が試される場面です。
この本には、一流の名将がどのように選手の人間性を磨いたかが、具体例とともに書かれています。
技術だけでなく、“人としての成長”を支える関わり方を学びたい方におすすめです。
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