チームがまとまらない本当の理由|4つの成長段階で“今やるべきこと”がわかる【ジャイアントキリングの流儀】

チームビルディング チーム作り

練習メニューを考えて、練習試合を計画して、日々の練習に励んでいる。
頑張っているんだけど、なぜかチームがまとまっていかない…。
そう感じたことはありませんか。

  • いい時もあるけど、急にメンバーの関係が悪くなる
  • キャプテンがいい形でまとめだしたと思ったら次の週は沈黙
  • 実力差で不満が生まれ、下級生は遠慮、上級生は苛立っている
  • 練習の雰囲気は悪くないのに、試合になると“バラバラ”
  • コーチとして関わり方を変えても、手応えが続かない

指導歴に関係なく、どのチームにも必ず起きる現象です。
でも、その原因を「気持ちの問題」「メンバーの質」「キャプテンの性格」のせいにしてしまうと、チーム運営が進んでいかず、コーチ自身も負担感が大きくなります。

その原因は——
チームの“状態”に合っていない関わりをしているから。

これはコーチのせいでも、チームの質のせいでもありません。
ただ、チームがどの段階にいるかを知らないまま手探りで進んでいるだけです。

もし、

  • 今のチームがどの段階にいて
  • 今やるべき関わりが何なのか
  • 次に起こるつまずきが何なのか

この“地図”が分かれば、コーチは迷わずチームづくりを進めることができます。
その地図を、スポーツ現場の実例つきで分かりやすく示してくれるのが
『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則――『ジャイアントキリング』の流儀』です。

※本の商品リンクにはアフィリエイトを利用しています。
※読んでくださる方の学びを深めるため、信頼できる書籍のみを紹介しています。

そして本書のエッセンスを使うと、
チームづくりは「4つの段階」を見極めるだけで半分うまくいく。

まずは、この記事の結論からお話しします。

結論:チームづくりは“段階対応”だけで劇的に変わる

チームがまとまらない。キャプテンが機能しない。実力差でギスギスする。
これらは“問題”ではなく、ただのプロセスです。
そして、チームが成長していかない原因は、「間違ったタイミングで、間違った働きかけをしている」ことです。

チームは“生き物”のように成長します。
その成長段階を理解していないと、良かれと思ってやった関わりが逆効果になることもあります。

つまり——
コーチングの半分は「今チームがどの段階にいるか」を見極めること。

この視点をくれた本が、
『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則――『ジャイアントキリング』の流儀』(講談社+α文庫)です。以下、『ジャイアントキリングの流儀』とさせていただきます。


ジャイアントキリングの流儀・チームの4つのフェーズ

『ジャイアントキリングの流儀』では、チームの成長過程を4つのフェーズで整理しています。
この4つの段階は、いわゆる「タックマンモデル」(チームが成果を出すまでの発達段階を示した有名な理論)を、スポーツ現場に合わせてわかりやすく説明したものです。マンガ『ジャイアントキリング』の場面を活用しながら、「チームが今どんな状態にあるのか」を理解できるのが特徴です。

まずは、この章では チームの“状態”(現象)の4フェーズ をシンプルに整理します。
※具体的な関わり方(コーチのアクション)は、次の章でまとめています。


①形成期(フォーミング):表面は平和だが“本音ゼロ”の時期

  • とりあえず仲は良いが、本音は出てこない
  • 「良い子モード」で、衝突を避けて動く
  • どう出るか探り合っているだけで、まだ協力ではない

この段階では、衝突が少ないため一見良いチームに見えますが、
まだ協力ではなく“ただ並んでいるだけ”の状態です。


②混乱期(ストーミング):衝突が起きる=“伸びる前の通過点”

  • 価値観の違いが噴き出す
  • 衝突が増える
  • リーダーの負担が一気に増える

ほとんどのコーチが「チームが壊れた」と感じる時期です。
パフォーマンスも低下します。
でも、本当はここがチームづくりの “一番大事な通過点” です。

ここを越えないと、どれだけ練習しても伸びていきません。


③統一期(ノーミング):協力と役割が生まれる“安定期”

  • 衝突を繰り返した結果、メンバーの役割が整理される
  • お互いが何を思っているのかがわかるため、衝突が減る
  • チームの方向性が揃い始める

混乱を乗り越えて、ようやく「チームとして動き始める」段階です。
衝突した結果、自分たちの当たり前の基準が作られます。
キャプテンの声が通りやすくなり、空気が安定します。


④機能期(トランスフォーミング):自走し成果を出す“成熟期”

  • 指示がなくても動ける
  • 誰がリーダーでも回る
  • 結果が自然と出始める

ここに到達すると、チームは「強さの再現性」を持つようになります。


フェーズ別:コーチがやるべきこと

ここまでは「チームの状態(現象)」の整理でした。
ここからは、各フェーズで“実際にコーチが何をすべきか”を解説します。
フェーズに合った関わりができると、チームの成長スピードは一気に上がります。


①形成期:安心と“明確さ”をつくる

この時期のキーワードは
“安心・明確・小さな成功”

  • チームの目標を決める
  • お互いを知るために、コミュニケーションの機会を作る
  • チームの「目的」を対話で共有する

「リーダーに任せる」のはまだ早いです。


②混乱期:衝突を止めない勇気

お互いに何を言っても大丈夫だという安心感を作ったら、
プレーやチームのことについて、積極的に話をさせます。

ここで一番やってはいけないのが、衝突の火消しをすること。

衝突は悪ではなく、価値観を擦り合わせるための必須プロセスです。

  • 価値観を話す場をつくる
  • 時間で区切らず、当事者同士の対話をすることをサポート
  • まず「否定せず」聞く姿勢を全員で共有

コーチはトラブルが起こるたびに、そのことについてメンバーが話す場を設定します。
話合いを練習時間の無駄遣いとするのではなく、チームづくりの“場”を整えることが仕事です。


③統一期:任せて支える移行期

少しずつ、メンバーの価値観のすり合わせが完了していき、「うちのチームはこういう方向に進んでいく」ということが、理解でき、感覚的にもメンバーが理解できるようになります。
そしてここでは、「任せる量」を少しずつ増やしていきます。

  • キャプテンに判断させる
  • ポジションリーダーを整える
  • コーチは“全体の方向性”に集中する

細かい指示は逆効果になる段階です。
コーチが積極的に介入すると、混乱期に逆戻りすることもあります。


④機能期:コーチが消える覚悟

ここでのキーワードは
「手放す」

  • 練習の課題設定を選手に任せる
  • コーチは観察とフィードバックに徹する
  • 結果への執着を抑え、プロセスを尊重

チームの主役を完全に選手に返すことで、自分たちで修正する力が働き、再現性のある強いチームができます。


よくある悩みは“フェーズ”で説明できる

どの相談も、実はフェーズのズレで説明できます。

  • キャプテンが機能しない
     →混乱期なのに無理やり同じ方向を向かせようとしている
     →形成期では「声が大きい子がリーダーっぽく見える」だけですが、混乱期に入ると実力や信頼のズレが表面化し、急に難しくなる
  • 実力差でまとまらない
     →形成期で役割が不明確
     →チームの価値観がすりあわされていないので、どういうチームになるのかみんながわからない
  • 下級生が動かない
     →統一期に入る前なので自発が生まれない
     →形成期で何をしたらいいのか、わからない
     →混乱期で自分の意見を言えていないので、チームの一員になれず、責任感がわいてこない
  • 雰囲気が悪い
     →混乱期で自然な現象
  • 伸び悩む
     →形成期のまま、意見をださず、何となくのままチームが進む
     →言い合いに我慢ができず、形成期に逆戻りする
     →統一期にたくさんコーチが口出しし、混乱期に戻る

フェーズを見ると、適切な一手がすぐに分かります。


まとめ:チームづくりに必要なのは“才能”ではなく地図

コーチの役割はまず、
「どのフェーズにいるのか?」を見極めることです。

フェーズが分かれば、
やるべきことがシンプルになり、チームは自然と前に進みます。

チームの成長は性格でも才能でもありません。
フェーズを判断し、正しい一手を打てば必ずチームづくりが進んでいきます。


関連書籍

・『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則 ―― 『ジャイアントキリング』の流儀』(木村昌裕)

マンガ『ジャイアントキリング』を題材に、スポーツチームが成長していく過程を「フェーズ」でわかりやすく整理した一冊。
特に 混乱期(ストーミング)を“悪いことではなく、伸びる前の通過点”と捉える視点 は、現場で悩むコーチにとって大きな救いになります。
チームがなぜ停滞するのか、どこでつまずくのか、それをどう越えていくのかをスポーツの文脈で具体的に理解できる実践的な本です。

・『あなたのチームは、機能していますか』(パトリック・レンシオーニ)

“チームがまとまらない理由”を、5つの機能不全というシンプルなフレームで整理した名著。
特に 「信頼がないと対立が起きる/対立を避けると本音が消える」 という構造は、混乱期(ストーミング)の理解を深めるのに最適です。
スポーツ現場でもそのまま使える視点が多く、コーチにとっての基礎体力になる一冊。

・『ビジョナリー・カンパニー② 飛躍の法則』(ジム・コリンズ)

強い組織が飛躍するために必要な “要因と順序” を徹底的に分析した名著。
特に 「だれをバスに乗せるか」
「第5水準のリーダーシップ」 の章は、形成期〜統一期でのコーチの関わり方を考える上で非常に参考になります。
チームが長期的に強さを維持する「再現性のある仕組み」を学べる一冊。

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※読者の学びを深められる、信頼できる本だけを紹介しています。


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