成果が出ているのに、チームが崩れていく。
その様子をただ見ているしかなかった――
そんな無力感を抱えながら、シーズンを過ごしたことがあります。
「きっかけはどこにあったのだろう?」
「コーチとして、あの時できたことはなかったのか?」
今でも自問自答しています。
果が出ている“その時”こそ、チームが崩れはじめているサインがあったかもしれません。
だからこそ、目の前の結果にとらわれすぎず、少しマクロな視点でチーム全体を捉えることが大切です。
本記事では、成果が続くチームに共通する2つの視点を紹介します。
成果が“続かない”チームで起こっていること
一度は成果を出したのに、その後が続かない。
「強かったはずなのに、気づけば崩れていた」――そんなチームに共通する問題があります。
それは多くの場合、チームの“土台”が不安定だったということです。
結果が出ている間は見えづらくても、次のようなサインが見え始めます。
- 主力選手が上達しなくなる
- 練習の雰囲気がなんとなく重くなる
- 話をしても、選手の目がこちらを見なくなる
- チーム内にグループができ、少しずつバラバラになっていく
これらは、成果の裏で“人が離れ始めている”兆候です。
そしてもう一つの兆候は、チームの中心人物の存在感が、空回りし始めること。
このふたつ――
「人がとどまるチームをどうつくるか」
「誰を中心に据えるか」
この視点が欠けていると、成果はどうしても続きません。
ポイント①:人が“とどまる”チームは成果が続く
どんなに良い人材がいても、すぐに辞めてしまってはチーム力は積み上がりません。
逆に言えば、「いい人が残ってくれるチーム」は、それだけで力を保ちやすくなります。
こんな悪循環が起きていませんか?
魅力がないチーム
→ 人が離れる
→ エネルギーが落ちる
→ チームの魅力がさらに下がる
→ もっと人が離れる…
このサイクルに一度入ると、抜け出すのは簡単ではありません。
でも逆に、反対のサイクルを作ることもできます。
目指すのはこの好循環
魅力があるチーム
→ 人が集まる
→ エネルギーが高まる
→ いい人がいい人を呼ぶ
→ さらに魅力が増す…
「魅力」といっても、特別なことをする必要はありません。
今いる人に対して、誠実に、丁寧に、関わりを積み重ねること。
それだけで、チームの雰囲気は確実に変わっていきます。
よく「人が来てから整える」と言う人がいますが、それでは間に合いません。
明日、あなたのチームに「いい人」がやってくるかもしれません。
そのときに、その人が「ここにいたい」と思える環境を、今から整えておく必要があります。
ポイント②:“中心にいる人”の選び方でチームが変わる
私自身、選抜のチームも含め、これまでに100チーム近くに関わってきました。
その中で何度も見たのは、「誰を中心に置くか」でチームの未来が変わるという事実です。
たとえばこんなケースがあります
- 個人として成果を出す選手を中心にした場合
→ 周囲との温度差が生まれ、ひとり相撲になることも - 理解力の高い選手を中心にした場合
→ 指導がチーム全体に浸透しやすく、安定感が出る - コミュニケーション力のある選手を中心にした場合
→ 一体感はあるが、勝負どころで決定力に欠けることも
最も成果が続いたと感じたチームは、こんな中心でした。
「直接成果につながらないけど、誰かのために動ける人」
→ 周囲の成果が上がる
→ その姿勢を真似する人が出てくる
→ チーム全体の底上げが起きる
「中心人物」と聞くと、キャプテンやエースを想像しがちですが、
チームを支える力は、見えにくいところにあります。
あなたのチームの中心には、今、誰がいますか?
その人の存在は、チームを“引っ張って”いるでしょうか?それとも、“支えて”いるでしょうか?
まとめ|成果が続くチームは、仕組みでつくられる
成果が出るだけなら、勢いや個の力でも可能です。
でも、成果を「出し続ける」には、人と仕組みの視点が不可欠です。
- いい人が「ここにいたい」と思う環境があるか
- チームの“中心”が、周りの力を引き出せているか
この2つの土台が整えば、成果は続きます。
過去の自分に、こう伝えたいです。
「目の前の結果だけを見ていたら、チームは持たないよ」って。
「チームがうまくいっているときこそ、土台見直す時期だよ」って。
今、あなたのチームはどんな状態ですか?
もし少しでも「うまくいってないかも」と感じたなら、
その直感は、たぶん、間違っていません。
あなたのその一歩が、チームをもう一度立て直すきっかけになるかもしれません。
関連書籍|おすすめの2冊
「人がとどまるチーム」「中心が機能するチーム」を深く考えるヒントになる本を2冊ご紹介します。
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ビジョナリー・カンパニー② 飛躍の法則
ジム・コリンズ 著
「最初に人を選び、次に目標を決める」
成果を出し続けるチームは、“人を選ぶ”ことを最優先にしています。
成果を出したいのなら、“誰とやるか”を真剣に考える必要があります。
この本では、「偉大な企業は“まず人”から始める」という視点から、成果が続く組織の土台を丁寧に解き明かしています。
スポーツチームにも通じる内容が多く、「チームづくりは人選」という視点を与えてくれる一冊です。
🟢 『常勝キャプテンの法則』
サム・ウォーカー 著
「強いチームには、“支えるリーダー”がいる」
派手なスーパースターではなく、“いぶし銀”な存在が勝利を支えていた。
キャプテンやリーダーに求められるのは、実力より“芯のある行動”ができる人かもしれません。
世界の“常勝チーム”を調査した著者がたどりついた結論は、
「目立たず支えるリーダーが常勝チームをつくる」という意外なものでした。
「中心に置くべき人」について、価値観が揺さぶられる一冊です。
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人がとどまるチームは、最初の設計が違う。
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“中心にいる人”がどんな資質を持っているかを深掘りした内容。
キャプテン候補の見極めにも役立ちます。
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